●語学力より経済力

 海外生活や海外移住を希望される方々が、まず不安に思うのは語学に対する心配事のようです。しかし基本的な英語力さえあれば、日常生活に何の支障もありません。日本人は語学に対するコンプレックスがあるせいでしょうか、結構上手に喋る人ですら、「英語に自信がありません・・・」と答えがちです。日本人特有の遠慮、謙遜というものですが、海外に来たら、ましてや生活や移住を考えるのであれば、遠慮や謙遜など誰も誉めてくれません。むしろイヤミになります。業務としての通訳レベルのことなど誰も求めてはいません。自分の語学力に対しての遠慮や謙遜は、その後の交友関係の妨げになりますから要注意です。

日常レベルの英会話力とは、スーパーマーケットで買い物が出来るとか、街角のコーヒーショップでコーヒーを注文出来るとか、その程度のことです。これくらいのことは年齢差など関係なく、誰でもやる気さえあれば、すぐ慣れますから心配無用です。むしろ、これを楽しむくらいで、ちょうどいいと思うことです。

 初歩の日常英会話とは?
 (1)数字の1から100までを英語で言える。
 (2)カタコト英語で、スーパーマーケットで買い物ができる。
 (3)カタコト英語で、自己紹介できる。


 この程度だと考えておけばよろしいです。「まさか、それだけで良いとは思えません。」と思われる方が多いと思います。それでは、フランス語で上記の(1)〜(3)が出来ますか? ドイツ語ではどうですか? スペイン語は? ロシア語は? おそらく普通の人でしたら、英語なら何とか(1)〜(3)が出来そうだけれど、他の外国語となると全くダメだ、となるのではないでしょうか?つまり、ここでは、英語に対するおかしなコンプレックスを無くすことを考えたいのです。

 国際政治の場で同時通訳をやるとか、商業英語の世界で翻訳家になる、というような場合は別です。あくまでも私たち普通の日本人が海外で生活するための英会話力を身に付けるために、まずは、おかしなコンプレックスを自己消去しなければならないのです。おかしなコンプレックスとは、

 (1)文法は完璧でなければならない。
 (2)発音はキレイでなければならない。
 (3)ヒヤリングは完璧に聞き取れなければならない。


 というような、完璧主義、100点主義に基づいているものです。しかし、そんなに完璧になれるのでしょうか?また、そんなに完璧でなければ海外生活が実現できないのでしょうか? 確かに英会話力は必要です。全く何もしゃべれないようではこれは問題ですが、実は語学力よりも、生活力全般の方が大切で、これは海外生活が長くなればなるほど実感できることだと思います。

 海外で生活するにあたり、求められるのは生活力です。生活力とは、慣れない環境下で暮らせるだけの体力と精神力、そして経済力を意味します。特に海外で働こうとせず、自由な海外生活を観光ビザの滞在範囲で行おうとするならば、日々暮らせるだけの資金が必要です。

 最低限の生活ラインをどこに置くかをしっかりと見極め、それが可能が資金を確保し、健康な体と前向きな気持さえあれば海外での生活はエンジョイした毎日になります。こうした生活力を保てば、自然と英語でのコミュニケーションを楽しもう、身につけよう、という気持になりますから、あとは流れに任せて英語を体得して行けばいいのです。繰り返しますが、海外生活や移住に求められるのは、語学力ではなくて、健康な体と生活できるだけの資金をバランス良く持ち合わせた生活力なのです。