●アパートを借りる
海外生活を長期でお考えの場合、居住する場所をどこにするか?ということは大きな問題になります。一般的にアパートを借りよう、と考える方が多いですが、海外でアパートを借りることについて、それが理想的な選択なのかを考えてみます。まず、留学や永住などのように、基本的に年間を通してそこに住むのであれば、金額的な効率は良いと思います。しかし、ロングステイや観光ビザの枠内での滞在の場合は、むしろコスト高になると覚悟した方がいいでしょう。
ロングステイや観光ビザでアパートを借りるリスク
(1)通常は1年契約となりますから、空き期間が多くなる。
(2)家具を揃えなければならない。
(3)各種公共料金の支払いが毎月発生する。
(4)各種公共料金の契約や解除という煩わしさがある。
よく質問される内容で多いのは、「3ヶ月だけ借りたいのですが」というように、1年未満の数ヶ月だけを希望する方のケースです。もちろん、このような要望に対応できるアパートがあれば理想なのですが、貸し主の側に立って考えてみてください。3ヶ月しか借りてくれない相手よりも、もっと長期に借りてくれる人を望むのは当たり前のことで、海外では通常、1年契約となりますから、数ヶ月単位で貸してくれるアパートは存在しないと思った方が賢明です。
勘違いしやすいのは、短期滞在を歓迎するコンドミニアムやアパートの情報ですが、こうしたものは、日本的な意味合いのアパートではありません。むしろビジネスホテルと考えた方がいいでしょう。日本人をターゲットにした海外の賃貸業者は、ビジネスホテルという名称よりも、アパートメントの方が日本人が抱くイメージが良く、またコンドミニアムという名称を使えば、さらにイメージが高まることを知っていますから、実態は単なる安ホテルやビジネスホテル程度のものでも、平気でコンドミニアムなどと称していますが、こうしたものは、ここでは省きます。あくまでも賃貸借契約に基づいたアパートについて考えることにします。
海外のアパートは、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアにおいては、どういう事情であっても、普通はキッチン設備は全て整っています。ですから、キッチン関係については、大がかりな機材を購入することはありません。上級クラスの物件になると、冷蔵庫、電子レンジ、食器洗い機、オーブン、ガスレンジまたは電気レンジ、食器棚が完備されています。普通のアパートの場合は、冷蔵庫、ガスレンジまたは電気レンジ、食器棚が完備されています。従って、アパートを借りた場合、キッチン関係については、それぞれ必要な備品程度を揃えるだけで済みますから、この点は日本のアパート事情よりも恵まれています。
家具類は一切付いていません。購入しなければならないのは、ベッドと寝具類、ソファセット、ダイニングテーブルなど、最低限の家具は用意する必要があるでしょう。日本ではソファなど持っていないから、ちゃぶ台と座布団で十分だ、などと思わないでください。そこは外国ですから、アパートのサイズも日本より大きめになります。あまりにも家具類が無いと、異様なくらい殺風景でせっかくの海外生活もしらけてしまいます。また、ごくまれに家具付きのアパートもありますが、当然値段が高くなります。
一ヶ月あたりの賃貸料金は、国、都市、地域によって様々ですが、総じて言えることは、安全で快適なところほど高く、そうでないところほど安い、と思ってください。日本も最近でこそ、物騒になり、安全と水はタダじゃないと言われるようになりましたが、海外ではその傾向はもっと強いのです。いい環境や安全はお金で買うものです。それが不動産価格や賃貸料、固定資産税となってしっかり現れるのです。従って、
キレイで安全で環境が良くて安いところがいいです。
などという子供じみたことは考えないでください。今の時代、ちょっと海外をしっている子供ですら、こんなことは言いません。キレイで安全なほど、値段は高くなるのです。それでも安さを求めるなら、環境は悪くなりますし、生活の不便さを覚悟しなければなりませんし、治安もまた悪くなると思った方がいいです。これが海外の常識です。もう一度まとめますと、
(1)安全であればあるほど、
(2)環境が良ければ良いほど、
(3)立地条件が良ければ良いほど、
(4)買い物に便利なら便利なほど、
値段が高くなるのです。
日本ですと、駅から徒歩何分とか、広さや間取りや建築年数によって値段が違ってきますので、環境や治安が値段に反映するということがありません。従って、一般的に日本人は海外のアパートの価格を見極めることが非常に下手だと言わざるをえません。そして、値段の高いところに住むことに対して、何となく贅沢なような、ある種の抵抗感を感じてしまうのではないでしょうか。
(1)自分には勿体ない。
(2)贅沢だ。
(3)もっと安いところで十分だ。
などと、妙な遠慮心を興してしまうのですが、海外の場合、そういったおかしな考え方は不要です。ご自分の予算内であれば、できるだけ、良いところ、つまり値段の高いところを借りるべきです。それによって安全な環境が得られるのです。日本人の場合は、海外生活を求める町のアパートの平均価格より、上の物件を探すべきで、年齢が上になればなるほど、値段が高い物件を選ぶべきです。
ロングステイや観光ビザの枠内で滞在する場合、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアは、最長連続滞在は6ヶ月未満となっていますので、アパートを1年契約で借りた場合、実際には年間の半分しか使えないと言うことです。従って、家賃の2倍が利用料金だと考える必要があります。また、公共料金に至っても、月々の基本料金は請求されてきますので、留守であってもコストがかかる訳です。その代わり、荷物は全て置いておけますから、日本から再び訪れた場合、その日のうちから滞在できる住処があるという利点があります。
アパートを借りることが効率的かどうか、については以上の通り、良い点、悪い点がありますので、ご自身の海外生活プランに合わせて熟慮されてください。
アパートを借りる利点
(1)いつでも利用できる。
(2)荷物を全て置いておける。
(3)友人知人に貸すことが出きる。(ただし料金が伴う二重貸し出しは違法となります。)
(4)外国の住所を持つことが出きる。
アパートを借りる欠点
(1)ロングステイや観光滞在の場合、実質の利用家賃は2倍になる。
(2)公共料金の契約や解除が必要になる。
(3)家具を買いそろえなければならない。
(4)公共料金の基本料金は月々発生する。
(5)通常は1年契約となる。
(6)物件によっては、身元保証人を求められる。
個人的な意見としては、年間の半分しか使えない立場であるとした場合、金額的には効率が悪いと思います。しかしながら、海外でアパートを借りて住むという体験そのものを重視される方は、多少の割高感を納得できるなら、チャレンジされてみるとよろしいでしょう。また、アパートを借りる場合、特に良い物件になればなるほど、借りる相手をしっかりと見極めてきます。家賃を支払うことができそうか、麻薬はやっていないだろうか、仕事や収入はきちんとしているかなど、貸す側にとっては貸し倒れリスクを軽減するため、誰にでも貸すということではないのです。
日本人の場合、約束事や支払いがきちんとしているという一般的なイメージがありますので、この点は問題ないのですが、ロングステイや観光ビザ滞在者の場合は、年間の半分しか使わず、あとは日本または第三国で生活するとなると、もしもの時に連絡がつかないのでは? という不安を貸し主が抱きます。この場合、現地に在住する身元保証人を求めてくることがあります。もちろん、全てがそういう訳ではありません。不動産市場が活発な町や、賃貸物件が不足している町、また物件自体が高級な場合は、このように保証人を求めてくる場合があるのです。
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